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酒蔵では納豆がNG?その理由を解説!

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酒蔵では納豆がNG?その理由を解説!

執筆者情報

shiho
お酒とねこでできているライター。日本酒、ウイスキー、ワイン…すべてのお酒をこよなく愛す。酒好きが高じて利酒師免許を取得。 Instagramはこちら https://www.instagram.com/ushinaaa/

監修者

日本酒ラボ編集部
日本酒ラボに携わってから日本酒のおいしさ・奥深さを知り、唎酒師の資格を取得。日本酒ラボを通して、日本酒のおいしさ・楽しさを日本酒にもあまり馴染みがない方にもお伝えしていきます。

日本酒を造る蔵人は「納豆を食べない」と聞いたことはないでしょうか?

これは、日本酒が微生物の働きで生まれる発酵食品であることが関係しています。納豆のもつ「納豆菌」が、酒造りに影響を及ぼすからです。

今回は、蔵人が酒造りのシーズンに納豆を食べない理由について解説します。納豆以外に気を付けたい菌や、時代によって変わりつつある納豆との付き合い方も、ぜひチェックしてみてくださいね。

1.酒造りシーズンに納豆を食べない理由

蔵人が酒造りのシーズンに納豆を食べない理由には、以下の2点があげられます。

  1. 納豆菌の高い繁殖力
  2. 納豆菌の高温や乾燥に強い生命力

日本酒も納豆も、微生物の働きで生まれる発酵食品です。納豆は、大豆を原料に納豆菌の力によって作られます。

日本酒造りには、麹菌や酵母菌、乳酸菌などの力が必要です。

つまり、これらの菌のバランスが、日本酒の出来を大きく左右するということ。酒造りのシーズンに納豆を控える理由には、納豆菌の特性が大きく関係しています。

1-1.納豆菌の高い繁殖力

納豆菌は、繁殖力の高い細菌です。納豆作りでは、煮豆に納豆菌をかけ、人肌くらいの温度で保管します。

納豆菌はどんどんと増え、独特のねばりと匂いをもつ納豆ができあがるというわけです。納豆1gあたりに存在する納豆菌は、約10億個にのぼるといわれています。

日本酒造りでは、蒸した米に麹菌を振りかけ、一定の温度で麹菌を繁殖させます。昔から「一麹、二酛、三造り(いちこうじ、にもと、さんつくり)」といわれるように、麹造りは重要な工程です。

もし、麹造りの段階で納豆菌が付着してしまったら?

納豆菌の繁殖力に負け、麹菌が活動できなくなってしまいます。そのため、酒造りには納豆菌が大敵といわれているのです。

納豆

1-2.高温や乾燥に強い納豆菌の生命力

納豆菌は、高温や乾燥に強い特性を持ちます。身近な田んぼや畑、枯草などにも存在する微生物です。

納豆菌は芽胞(がほう)と呼ばれる殻をつくるため、天日干しの環境でも生き残ることができます。マイナス100℃~100℃の温度帯でも存在するため、熱湯消毒をしても殺菌効果が得られません。

蔵内を洗浄、消毒してもすべては取り除けない恐れがあるため、納豆菌は蔵に持ち込んではいけないといわれています。

2.納豆菌以外の菌は大丈夫?

酒造りのシーズンは、納豆菌だけでなく乳酸菌にも注意が必要です。乳酸菌の一種である火落ち菌(ひおちきん)は、日本酒の味や香り、色を変化させる恐れがあります。

日本酒はアルコール度数が高いため、多くの細菌は生息できないといわれています。しかし、火落ち菌はアルコール耐性が高いため、お酒のなかで繁殖してしまう可能性があるのです。

乳酸菌は、チーズやヨーグルト、漬物などの発酵食品に含まれています。蔵によっては納豆だけでなく、これらの食品も控えることがあるようです。

ヨーグルト

3.時代により納豆との付き合い方が変わってきた理由

かつては酒蔵で厳禁とされていた納豆も、近年は必ずしもNGとは限らないようです。時代により納豆との付き合い方が変わってきた理由には、以下の2点が挙げられます。

  1. 納豆菌の変化
  2. 酒蔵の設備と酒造りの変化

蔵によっては、食べた後にきちんと歯磨きや手洗いをしたり、蔵の外で食べたりすればOKというケースもみられます。

3-1.納豆菌の変化

ひとつめの理由は、納豆菌の変化です。本来、納豆は繁殖力の高い野生の納豆菌で作られていました。

近年、流通用の納豆に使用されるのは、繁殖力の弱い純粋培養された納豆菌です。そのため、納豆菌による汚染の心配は少ないといわれています。

納豆

3-2.酒蔵の設備と酒造りの変化

ふたつめの理由は、酒蔵の設備や酒造りの変化です。かつての酒蔵では、日本酒を仕込む桶や道具に木材が多く使われていました。

現在は、ステンレスやホーローなどが主流です。殺菌消毒材も進化し、納豆菌による汚染リスクも少なくなったと考えられます。

特に、かつては米麹を造る部屋で藁(わら)が使用されていたため、自然の納豆菌が藁から麹へ付着する恐れがありました。現在は、より衛生的な環境設備を使用することで、納豆菌の付着リスクが抑えられています。

また、近年は米の外側をより多く削り、日本酒造りに使用することが多くなりました。米の外側には、さまざまな栄養分が含まれています。菌の繁殖に必要な栄養分が削られているぶん、納豆菌はさらに繁殖しにくくなるというわけです。

まとめ

近年は、納豆菌の変化や酒造設備の進化により、納豆菌が酒造りにおよぼすリスクは少なくなっています。とはいえ、納豆菌のリスクがまったくのゼロになるわけではありません。

酒蔵では、衛生管理に努めるとともに、願掛けの意味合いも込め納豆を控えるケースが多いようです。蔵見学でも「見学の朝は、納豆やヨーグルトなどは控えてください」とお願いされることがあります。

日本酒は、目に見えない微生物の働きで生まれるお酒。そのことを意識しながら、日本酒の味わいを楽しんでいきたいですね。