おしゃれだったり、かっこよかったり、多種多様なデザインが施された日本酒のラベル。実は、そのなかにさまざまな情報が隠されているのをご存じでしょうか?
日本酒好きのなかには、ラベルの情報をもとにお酒を選ぶという人も。今回は、日本酒のラベルの読み方について詳しくお伝えします!
「ラベルをコレクションしたい」という方におすすめの、ラベルの剥がし方もぜひチェックしてみてくださいね。
目次
1.ラベルに必ず記載されている項目
日本酒のラベルには、「必ず記載する項目」と「任意で記載する項目」があります。酒類業組合法で記載が義務付けられているのは、以下のような項目です。
- 酒類の品目
- 原材料名
- 製造時期(製造年月または製造年月日)
- 原産国名、外国産清酒を使用したものの表示
- 保存又は飲用上の注意事項
- 製造者の氏名または名称、製造場の所在地
- 容器の容量
- アルコール分
- その他
これらが書かれた日本酒のラベルは、いわばお酒のプロフィールともいえるもの。まずは、必ず記載されている項目についてチェックしていきましょう。
1-1.酒類の品目
ラベルでまず目に入るのが、酒類の品目です。品目欄には、「清酒」または「日本酒」と表示されています。
ただし、どのようなお酒でも清酒や日本酒を名乗れるわけではありません。酒税法では、以下の条件をクリアするものが日本酒と定義されています。
- 必ず米、米麹を使用すること
- 必ずこすこと
- アルコール分が22度未満であること
条件にある「こす」とは、醪(もろみ)を搾り、液体と固体に分ける工程のことです。日本酒は、米と米麹、水を発酵させた醪を搾って造られます。
そのため、搾らずに仕上げる「どぶろく」などは、清酒または日本酒と表示することはできません。
ほかにも、使用する醸造アルコールや糖類などの重量が、米の重量の50%を超えた場合も日本酒、清酒と表示できないことになっています。
「これは日本酒です!」と名乗って販売するためには、さまざまな条件をクリアする必要があるということですね。
1-2.原材料名
ラベルの原材料名は、使用する量が多い順に表示されています。これは日本酒に限ったことではなく、すべての食品ラベルに通ずる基本的なルールです。
前述したように、日本酒の主原料は米と米麹です。さらに、醸造アルコールを添加した日本酒のラベルには「米・米麹・醸造アルコール」の順で原材料名が表示されます。
また、純米酒や純米吟醸といった「特定名称酒(とくていめいしょうしゅ)」を名乗るお酒の場合は、原材料名のそばに「精米歩合 〇%」と米をどれだけ精米しているかわかる数値を表示します。
1-3.製造時期(製造年月または製造年月日)
食料品のラベルでは、製造年月日や賞味期限をチェックする人も多いのではないでしょうか。
実は日本酒は、賞味期限の表示義務がないお酒。代わりに、ラベルには「製造時期」が記されています。
製造時期とは、日本酒を瓶に詰めた日、または日にちのこと。ちなみに「〇年貯蔵」など貯蔵期間を表示するお酒の場合は、瓶に詰めた年月日だけでなく、製造場から移出した時期の表示も必要です。
1-4.原産国名
海外から輸入された日本酒の場合は、原産国名を表示する必要があります。また、国内産と外国産両方を使用して製造した場合は、外国産清酒の原産国名と使用割合を表示しなくてはいけません。
「海外から日本酒を輸入?」とふしぎに感じるかもしれませんが、近年は海外でも美味しい日本酒が造られています。
“日本酒を世界酒に”をコンセプトにかかげる「WAKAZE(わかぜ)」は、フランス・パリに日本酒の醸造所を持ち、東京・三軒茶屋でどぶろくを造る酒造メーカー。
また、同じくフランスの「昇涙酒造(しょうるいしゅぞう)」では、鳥取で酒造りを学んだフランス人の蔵元がこだわりの日本酒を生み出しています。
1-4.保存又は飲用上の注意事項
「生酒」と呼ばれる加熱殺菌処理をしていないお酒は「なるべく冷暗所に保管し、開栓後は早めにお召し上がりください」など、保存時の注意点を表示する必要があります。
日本酒は賞味期限の表示義務がないお酒ですが、ラベルには美味しく飲むためのトリセツが書かれていることも覚えておきたいですね。
1-5.製造者の氏名または名称、製造場の所在地
ラベルには、お酒を造った人または蔵の名前や、造られた場所の表示が義務付けられています。美味しい日本酒を飲んで「どこでできたの?誰が造っているの?」と気になったときは、ぜひラベルをチェックしてみてください。
1-6.容器の容量
日本酒の容器の容量は、四合(720ml)と一升(1800ml)が一般的です。また、近年は300~360ml容量の飲み切りサイズも多く販売されています。ちなみに、ラベルに表示する文字の大きさも、容量や文字数にあわせて細かく規定されているんですよ。
1-7.アルコール分
日本酒は、製造工程で水を加えアルコール度数を15~16%に調整します。「原酒」と呼ばれる加水調整しない日本酒の場合は、アルコール度数が18%以上になることも珍しくありません。
日本酒を飲み慣れない方や、度数の高さが不安という方は、ラベルのアルコール分をチェックしてみてください。近年は、アルコール度数をおさえた「低アルコール日本酒」も続々と登場しています。
度数が高い飲みごたえがある原酒であれば、ロックスタイルで楽しむのもおすすめですよ。
1-8.その他
「お酒は二十歳になってから」「未成年の飲酒は法律で禁止されています」といった表記。実は、こういった未成年飲酒防止に関する文言も、表示が義務付けられている項目なんです。
お酒によっては「妊娠中、授乳中の飲酒はお控えください」「美味しく楽しく健康に」など、蔵独自の注釈も確認することができますよ。
2.酒蔵によって任意で記載する項目
日本酒のラベルに表示される項目には、酒蔵によって任意で記載されているものもあります。日本酒の味わいを知るヒントになるため、ぜひ必要事項とあわせてチェックしてみてください。
2-1.特定名称酒
特定名称酒とは、純米酒や大吟醸といった、原料と製法で分類された呼び名のことです。日本酒のラベルでよく見る表示ですが、記載するしないの判断は酒蔵に任されています。
酒蔵によっては「スペックで味わいを判断しないで」との思いから、あえて特定名称酒を表示しないことがあります。
2-2.成分表記
日本酒の繊細な味わいは、さまざまな成分が複雑に絡み合うことで生まれます。ラベルによっては、以下のような成分表記でお酒のおおまかな味わいをイメージすることができます。
酵母
日本酒は、酵母によって味や香りが複雑に変化します。そのため、使用する酵母は蔵のこだわりが色濃く表れる部分です。
また、福島県の「うつくしま夢酵母」、岩手県の「ジョバンニの調べ」など、各県ではオリジナル酵母の開発が進んでいます。酒米の種類はもちろん、酵母に着目してお酒を選んでみるのもおもしろいですよ。
日本酒度
日本酒度は、お酒の甘辛度合いを示す指標のひとつです。「+」と「-」で表記され。数値がプラスになるほどキリッとした辛口のお酒、マイナスになるほど甘口のお酒とされています。
酸度
酸度は、日本酒に酸味や旨味をもたらす有機酸の量をあらわす数値です。日本酒度が同じお酒でも、酸度が高ければ濃醇で辛く、低ければ甘く端麗な味わいに感じられます。
アミノ酸度
アミノ酸度は、お酒に旨味やコクをもたらすアミノ酸の量をあらわしています。アミノ酸度が高いお酒は、濃醇な味わいに仕上がるのが特徴です。反対に、アミノ酸が低いお酒はスッキリとした淡麗な味わいに仕上がります。
3.記載してはいけない情報はある?
日本酒のラベルには、次のような3つの項目は表示することはできません。
- 品質や製法が「最高」「第一」「代表」など最上級を意味する用語
- 官公庁御用達またはこれに似た用語
- 特定名称酒以外のお酒に用いる特定名称に似た用語
例えば「3」に関しては、特定名称“純米酒”の規格を満たしていないにもかかわらず“米だけのお酒”と似た用語を用いるのはNGということになります。
この場合、消費者に誤解を与えないよう「特定名称酒には該当しません」という追加の説明表示が必要です。
4.日本酒のラベルの剥がし方と保存方法
個性あふれる日本酒のラベル。お気に入りのものはとっておきたい!という方も多いのではないでしょうか。ここでは、日本酒のラベルの剥がし方と保存方法をご紹介します。
4-1.日本酒のラベルの剥がし方
1)お湯に浸ける
いちばん手軽で確実な方法です。日本酒のラベルの多くは、一定時間お湯に浸けることでスルリと剥がれます。
おすすめは、お風呂のお湯の中。大きな瓶を浸けおきたいときも場所を取りません。瓶が複数あっても一度に浸けおきできます。剥がしたラベルは、接着面を上にした状態でタオルなどに置いて乾かしてくださいね。
2)シール剥がしを使う
市販のシール剥がし液や専用スプレーを使うのもひとつの方法です。一定の手間や時間を要するものの、ラベルを濡らさずに剥がすことができます。
3)ドライヤーで温める
ラベルを霧吹きなどで軽く濡らし、ドライヤーで温めると徐々に剥がすことができます。一定の時間を要するほか、瓶が熱くなることがあるため作業時は十分に気を付けてください。
4-2.ラベルの保存方法
剥がしたラベルは、画用紙やノートなどに貼って保存するのがおすすめです。お気に入りのラベルであれば、そのままフレームに入れて飾るのも良いですね。飲んだ日の日付や味などをメモすれば、お酒の思い出もそのまま保存することができますよ。
まとめ
日本酒のラベルには、どんな人がどこで造ったお酒なのかという大切な情報が記されています。日本酒を飲み慣れない方は、ラベルのアルコール度数を目安にお酒を選ぶのもおすすめです。
また、成分表記があれば、味をイメージするひとつの目安になります。ぜひ、お酒を彩るラベルにも注目しながら、日本酒選びを楽しんでみてくださいね。