日本酒を飲むときに使うおちょこ。目にすることの多い青い円は、「蛇の目(じゃのめ)」と呼ばれます。
蛇の目のおちょこは、日本酒の味わいを確かめるために作られたものです。今回は、蛇の目という呼び名の由来や役割などについて紹介します。
利き酒のポイントも紹介するので、ぜひ自宅で日本酒の飲み比べを楽しむ際の参考にしてくださいね。
目次
1.おちょこの青い円の名前や役割
おちょこの底に書かれた青い円は「蛇の目(じゃのめ)」と呼ばれます。蛇の目が付いたおちょこは、日本酒のテイスティング「利き酒(唎酒)」に用いられるのが一般的です。まずは、蛇の目という名前の由来や青い円の役割についてみていきましょう。
1-1.おちょこの青い円の名前とその由来
「蛇の目」の呼び名は、江戸時代に作られた傘の名前に由来しています。白く太い円が描かれた当時の傘は、模様が蛇の目(へびの目)に見えることから「蛇の目傘」と呼ばれていました。
蛇の目のおちょこが誕生したのは、1911年(明治44年)のこと。第1回全国新酒鑑評会で、審査員用のおちょことして作られたのが始まりです。
現在は日本酒をイメージさせるおちょことして、利き酒用としてだけでなく、イベントや飲食店などでも幅広く用いられています。
1-2.蛇の目のおちょこの青い円の役割
蛇の目のおちょこの青い円には、お酒に浮かぶ細かな浮遊物を見えやすくする役割があります。
無色透明の日本酒は、醪(もろみ)と呼ばれる白い液体を布などに入れて搾り、さらに小さな滓(おり)を取り除くことでできあがります。なかにはあえて滓を残して仕上げる日本酒もあり、蛇の目の青い円はそれらを確認するのに役立つというわけです。
また、日本酒はろ過の有無や熟成度合いによって色合いが変化するお酒です。青と白のコントラストはお酒の色合いを引き立て、微妙な色の違いを判別する際に役立ちます。
1-3.蛇の目のおちょこのサイズ
蛇の目のおちょこのサイズは、三勺(約54ml)や五勺(約90ml)が一般的です。なかには、ぐい呑みサイズの八勺(約144ml)のおちょこも販売されています。
また、多くの酒蔵では「本利きちょこ」と呼ばれる1合(約180ml)サイズのおちょこが使用されます。サイズは大ぶりですが厚みは薄く、蛇の目が手描きで描かれているのが特徴です。
2.蛇の目のおちょこを使った利き酒の楽しみ方
蛇の目のおちょこを使うと、自宅でも気軽に利き酒を楽しめます。日本酒の味や香りが客観的に感じられ、自分好みの味わいをより見つけやすくなりますよ。
2-1.利き酒とは
そもそも利き酒とは、酒造りに携わる人が行う「官能検査」のことです。
酒蔵では、前述した本利きちょこを使い、お酒の出来栄えを評価する利き酒が行われてきました。また、全国新酒鑑評会のようなお酒を品評する場でも利き酒が行われています。
近年はアマチュアを対象とした「きき酒大会」が開かれるなど、利き酒は消費者にとっても身近なものになりつつあります。飲食店などで複数のお酒を一度に楽しめる「利き酒セット」を見かけることも多いですよね。
「リンゴのような香りで味わいはスッキリ」「落ち着いた香りでコクがある」など、味わいを客観的に表現できるようになると、自分の好みの日本酒を見つけやすくなります。酒販店や飲食店でも、日本酒の好みについてわかりやすく伝えられるようになりますよ。
2-2.利き酒を楽しむためのポイント
日本酒は、温度によって味わいが変化しやすいお酒です。利き酒の際は、15~18℃のやや冷えた温度帯にすると味や香りを感じやすくなるでしょう。
お酒の色合いを確かめるため、利き酒は自然光に近い照明の下で行うのがおすすめです。香りの感じ方に影響しないよう、香りの強い化粧品や香水などの使用は控えましょう。
一度にたくさんのお酒を評価するプロの利き酒は、お酒を口に含んでから吐き出すのが一般的です。自宅で利き酒を楽しむ際は、ぜひ少しずつおいしく味わってください。悪酔いを防ぐため、和らぎ水を用意しておくと安心ですね。
2-3.利き酒の楽しみ方3ステップ
利き酒は、視覚や嗅覚、味覚を使いながら日本酒の個性をチェックしていきます。蛇の目のおちょこに日本酒を注いだら、まずは色合いのチェックからスタートしましょう。
ステップ1.色合いを確かめる
搾ったばかりの日本酒は、うっすらと黄色く色付いているのが一般的です。その後「濾過(ろか)」の工程を経て色や香りが調整されます。
日本酒のなかには、ろ過をしていない山吹色のお酒や、白くにごった「にごり酒」などが存在します。微発泡感のあるお酒や、琥珀色の熟成酒など色合いはさまざまです。
まずは「透明度が高い」「白くにごっている」「淡い黄色」など、日本酒の味わいにつながる色の個性を、蛇の目模様を見ながら確認していきましょう。
ステップ2.香りを確かめる
色合いの次は香りをチェックします。おちょこに鼻を近づけ、上立つ香(うわだちか・うわだちこう)と呼ばれる香りを確認しましょう。その後、口に含んで含み香(うくみか・ふくみが)を感じていきます。
日本酒の香りは、花や果実を思わせるや穀物のような香り、蜂蜜のような甘い香りなど多岐に渡ります。花や果実のような香りは「吟醸香(ぎんじょうか・ぎんじょうこう)」と呼ばれ、吟醸酒に多く発現する香りです。
また、穀物や乳製品を思わせる香りは、生酛や山廃といった昔ながらの製法で造る日本酒に多くみられます。熟成酒は、蜂蜜やナッツのような複雑かつ甘い香りがするのが特徴です。香りからも、ぜひ日本酒の原料や製法などの個性を感じ取ってみてください。
ステップ3.最後に口で味わいを感じる
香り、色合いの次はいよいよ味わいを確認。蛇の目のおちょこに口を付け、日本酒を味わってみましょう。
ひとくちに「甘い」といっても、サラリとした軽やかな甘みやふくらみのある甘みなど、感じ方は人それぞれです。お酒によっては、後口にキリリとした酸味が感じられることもあります。
「これは温めて飲んでみたいな」「おつまみを合わせるなら何にしよう」など、具体的な飲み方を想像するのも、日本酒を楽しむための利き酒ならでは。合間に和らぎ水でクールダウンしながら、自分好みの味わいを見つけてみてくださいね。
まとめ
青い円が描かれた蛇の目のおちょこは、利き酒用に作られたものです。青色の蛇の目模様は、日本酒の色合いなどを評価する際に役立ちます。
蛇の目のおちょこを使えば、自宅でも気軽に利き酒にチャレンジできます。色や香り、そして味わいの違いを知り、日本酒の奥深さや楽しさを感じてみてはいかがでしょうか。