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【KUBOTAYA】酵母も変異する? 酒造での酵母選びの現場に潜入

【KUBOTAYA】酵母も変異する? 酒造での酵母選びの現場に潜入

11月5日は「酵母の日」。酵母は酒造りの世界になくてはならない存在です。今回は「久保田」などの日本酒を造る酒蔵、朝日酒造が毎年行っている、酵母にまつわる作業「酵母選抜」をクローズアップします。目には見えない酵母を選ぶという舞台裏に、朝日酒造の日本酒の美味しさの理由の一端がありました。

身近にたくさん! 酵母の力を借りた食品

味噌

11月5日は「酵母の日」です。酵母を摂ることの大切さをアピールする日として制定されています。

酵母とは、小さな微生物の一種。自然界に広く分布し、たくさんの種類が存在しています。
酵母には食材を発酵させる働きがあり、パン、しょうゆ、味噌などの、いわゆる発酵食品と呼ばれるものに用いられています。キッチンを見渡せば酵母の力を借りた食品がきっと1つは見つかるはず。

ちなみに11月5日が酵母の日になった謂れは、11月5日の日付を「い(1)い(1)こ(5)うぼ」と読む語呂合わせからだそう。

酒造りに欠かせない酵母

酵母

パンやしょうゆ、味噌以外にも酵母の力を借りているものがあります。それは、ワインやビール、そして日本酒などのお酒類。

酒造りにおいては、アルコール発酵と、日本酒独特の香りを生むなどの役割を担う酵母。そのため、酒造りには不可欠の存在なのです。
清酒、ワイン、焼酎などお酒の品目によって、酵母に求められる性質は異なります。それぞれのお酒の製造への適性の高いものが優良菌株として選抜され、ワイン酵母、焼酎酵母などとして伝統的に維持・使用されてきています。日本酒に使われる酵母は「清酒酵母(せいしゅこうぼ)」と呼ばれ、こちらも同じように伝統的に維持・使用されてきています。

今回はそんな大事な酵母について、朝日酒造で毎年9~10月にかけて行っている「酵母選抜」という作業に注目していきます。
目に見えない酵母を選抜するなんて、一体どんな作業なのでしょうか? また、その作業は朝日酒造の造る日本酒の美味しさにどのように関わっているのでしょうか?

本記事で酵母への理解を深めたあとは、日本酒の美味しさがより奥行きを持って伝わってくるはずです。

朝日酒造で行う酵母選抜とは

朝日酒造の社屋

朝日酒造は、水田と里山が広がる新潟県長岡市で1830年(天保元年)に創業し、190年以上に渡って酒造業を営んでいます。

朝日酒造が1985年に産んだ「久保田」は、品質本位の酒造りを続けてきた朝日酒造のフラッグシップとして、多くの日本酒ファンを魅了してきました。その味わいは、まさに淡麗辛口の王道。飲み飽きないやわらかな口当たりと、すっきりとしたキレのある味わいは、世代や性別にかかわらず、多くの人から愛されています。

どうして酵母選抜を行うのか?

酵母選抜の様子

まずは、どうして朝日酒造が毎年酵母選抜を行うのか、その理由を見ていきましょう。

酒造りへの適性の高いものが選抜され、代々受け継がれながら維持・使用されている清酒酵母。朝日酒造の酒造りでは、多くの酒蔵と同様に、日本醸造協会が頒布している清酒酵母のほか、自社で育種した酵母も使っています。朝日酒造の研究開発を担う日本酒研究センターには、自社で開発した数千種類の酵母の中から選び抜かれた酵母がアーカイブとして蓄積されています。

そして、そんな清酒酵母も私たち人間と同じ生き物。そのため、たとえ比較的安定しているとされている酵母であっても、生育され維持されていく過程で、少しずつ性質が変わっていきます。
例えば、元々はよい香りを生成する酵母であったのに、オフフレーバーと言われる日本酒の商品価値を損なう香りも生成してしまうようになった、ということが起こり得るのです。

酵母は酒造りにおいてアルコール発酵や日本酒独特の香りを生むといった大事な役割を担っています。そんな酵母の性質が変わってしまえば、当然それを使って造る日本酒の酒質も変わってしまいます。つまり、酵母が日本酒の品質維持という部分に、大きな影響を及ぼす可能性があるのです。

朝日酒造では商品によって異なった酵母を使い、酒造りをしています。
そこで、「この酵母は、自分たちのあの商品の味わいを造るのに適した性質をきちんと備えているのだろうか?」というのを見極めるために、対象となる酵母について毎年酵母選抜を行います。
酵母選抜では、候補になっている複数の酵母から、できるだけ例年と同程度、あるいは例年よりもさらに、自分たちの理想とする味わいを造るのに適した性質を持った酵母を見つけることがゴールとなります。

酵母を選ぶ方法とは?

酵母選抜の様子

朝日酒造では、酵母を使って実際に酒造りを行い、できあがった酒をきき酒する、という方法で酵母を選抜しています。
担当者は候補となっている10株の酵母の中から4株まで候補を絞り、4株の酵母を使って酒を造ります。その後、製造部の責任者や杜氏が4種類の酒をきき酒します。そして、ベストである1株を選び、「今年はこの酵母で酒を仕込もう」と決まるのです。

酵母選抜の具体的な作業内容

ここからは、酵母選抜の流れを簡単に紹介します。

酵母選抜では、商品となる酒を仕込む時のような大きなタンクなどは使わずに、小規模な酒造りを行います。
ですが、完成までの工程は本番さながら。朝日酒造の酒造りの現場と同様、添仕込み、仲仕込み、留仕込みという三段仕込みを行います。
そうすることで、製造部の責任者や杜氏は、より実醸造に近い状態の酒をきき酒できます。つまり、より現場に条件を近づけた状態で、酵母を選ぶことができるのです。

①酵母の培養

酵母をスティック(白金耳)に付着させ液体培地に移し、そこで培養し、酵母を増やしていく作業からスタートします。
およそ30℃ほどに保った環境で、2~3日間かけて培養します。
酵母の培養
液体培地にて酵母を培養。

②三段仕込み

甑(こしき)を使って米を蒸し、培養した酵母を使って、添仕込み、仲仕込み、留仕込みの三段仕込みを行います。
甑(こしき)を使って米を蒸す
甑を使い米を蒸す。
蒸米の加えられた瓶
酵母と水、米麹の入った瓶へ蒸米も投入し、発酵させていく。
もろみ初期
およそ4日後の様子。水を吸った蒸米がふんわりと膨らんでいる。この時、酵母も増殖中。
もろみ中期
さらに5日後。蒸米が糖分となり、その糖分を酵母がアルコールと炭酸ガスに換えているため、米の嵩が減っている。

③上槽

留仕込みが終わってから20日前後経過したところで上槽(酒を搾る作業)を行います。
酵母選抜では遠心分離を利用し、原酒と酒粕に分けていきます。
遠心分離を利用したあとの様子
遠心分離を利用し原酒と酒粕に分けられた状態。
日本酒の製成
原酒部分を取り出したら完成。

④きき酒

作業の冒頭からここまで、およそ1ヶ月と少し。製造部の責任者と杜氏がきき酒を行い、酒造りに使用する酵母が決まります。

日本酒の美味しさを支える重要人物

久保田 千寿

アルコール発酵や日本酒特有の甘い香りを生み出すなどの働きをする酵母。
日本酒の味わいや香りを左右する重要な存在でありながら、生き物であるため性質が変わりやすいため、朝日酒造では酒造りにより適したものを毎年選抜しています。

目には見えなくとも酒造りのキーパーソンである酵母と、よりよい酵母を選ぶという人間の作業が合わさり、今日も美味しい日本酒が飲めているのですね。
今夜は酒造りを支える重要人物たちに乾杯してから、日本酒を飲んでみるのはいかがでしょうか。

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