日本酒「久保田」は日本酒好きの間ではもちろん、日本酒を飲まない人でも知っているほどの有名な銘柄です。この久保田はさらにいくつかの種類に分かれており、それぞれ味わいが異なります。今回は久保田の中でもベストセラー商品である「久保田 千寿」について、その歴史や造りのこだわり、味わい、商品ラインナップなどを徹底解剖します。
「久保田 千寿」とは
「久保田 千寿」の歴史
「久保田 千寿」は、1985年の「久保田」発売時に最初に誕生した、まさに久保田の原点です。発売当初から今日に至るまで高い人気を誇り続ける、シリーズを代表するベストセラーです。
久保田の誕生当時、清酒業界は低価格競争になっており、日本酒離れが危惧されていたため、高品質の日本酒を適切な価格で提供することを使命と考えました。また、都会に生きる日本人の労働の礎が、肉体労働から知的労働へ移り変わっていく姿を見て、これからは食事もこってりしたものより、あっさりした食が好まれていくだろうと予見。それに伴い、酒もすっきり飲める「淡麗辛口」にすべき、と考えました。そのために、酒造りを根本的に改善し、その当時としては万人向けではない、綺麗であっさりした辛口でありながら、まろやかさを感じさせる味わいを実現したのです。
久保田の名前は、製造元である朝日酒造の創業時の屋号「久保田屋」に由来しています。
その久保田の最初の商品として誕生したのが、「久保田 千寿」です。
その結果、久保田は長きにわたり、人々に愛される日本酒として全国的に知られる銘酒に成長しています。
口に含んだ際の淡麗な味、そして口の中にゆっくり旨味が広がっていくことによる味わいの変化で、千寿のもつ潔さが感じられます。また、飲み進めるごとに洗練さが際立ち、よりすっきりした味わいを楽しむことができる点も千寿ならではです。
杜氏の酒造りへのこだわり
千寿には、原料の水も米も新潟県産にこだわった、いわば真の地酒です。県内でもとりわけ硬度が低い軟水と、原料米にはすっきりした飲み口の日本酒に適した品種である新潟県産の「五百万石」を使用しています。
千寿を醸造するのは、朝日酒造の松籟蔵の大橋杜氏。杜氏曰く、千寿で追求しているのは“食事と合うすっきりとした味わい”。すっきり感を引き出すのにまず大事なのは、もろみの発酵です。「もろみは、低温長期発酵で造っていますが、もろみの温度を以前よりも低温で管理しています。酵母の活性をよく観察しながら、低温でじっくりともろみを育てています。そうすることで、より雑味のないすっきり感を引き出すことができています」(大橋杜氏)
さらに、杜氏ならではのこだわりも。
「千寿のすっきり感は大事にしつつ、やわらかさを出したい、という想いがありました。そのため、製麹の際、酵素力価が高い麹、つまり糖化力が高い麹造りをしています。そうすることで、綺麗ですっきりとした淡麗な味わいはそのままに、深みやほのかな余韻や甘味も加わり、味わいの幅につながっています」(同杜氏)
「久保田 萬寿」との違い
久保田のラインナップの中には「久保田 萬寿」というお酒があることをご存知でしょうか。千寿と名前が似ていますが、異なる点が多々あります。
千寿は、精米歩合55%の吟醸酒であるのに対して、萬寿は、精米歩合33%まで磨いた米を使った純米大吟醸酒です。また、千寿は醸造アルコールを添加しているため、よりすっきりとした味わいに、萬寿は、速醸仕込みと山廃仕込みを独自の割合によりブレンドしていることで、香りや深みがより印象的で、やわらかく華やかな味わいになっています。
つまり、同じ久保田にラインナップする日本酒ではあるものの、すっきりとした飲み口の千寿とまろやかな深みのある萬寿は、それぞれ対極となるような味わいの違いを持っていると言えます。
萬寿は久保田シリーズの中でも高級で、贈答品などにも適しています。普段の食卓で料理と一緒に味わうなら、いつもの食卓を少し特別にする「食事と楽しむ吟醸酒」の千寿がおすすめです。
「久保田 千寿」の味わいと楽しみ方
千寿の香り・味わい
味わいは、雑味のない綺麗な透明感のある味わいで、まさに淡麗辛口。その中に、ほんのりと米の旨味やほのかな甘味や酸味も感じられます。そして、魅力はなんといっても「キレの良さ」。喉を通った後、水のように流れる軽やかさを感じられ、後味をすっきりとまとめ上げます。この味わいが料理の味を邪魔することなく、素材が持つ味と香りを引き立てるので、毎日の食卓にもぴったりのお酒です。
千寿の楽しみ方
千寿を造る杜氏は、「素でも、料理と一緒でも、冷やしても、温めても、旨いと感じてもらえる、そういうお酒を目指しています」と話します。
まず、素で飲む際にこだわってみて欲しいのがグラスです。特徴であるすっきりとした飲み口を楽しむ場合は、ストレートのグラスがおすすめです。ストレートのグラスだと、お酒の香りや風合いをすっと口まで運ぶので、味わいをダイレクトに楽しむことができます。
温度帯は、杜氏の話す通り、冷酒から常温、燗酒と幅広い温度帯で楽しめる万能選手ですが、まずは10~15℃程度の冷やから楽しんでみてください。そこから、温度を上げていってお好みの味わいを見つけてみるのも楽しいものです。
また、合わせる料理の温度帯に合わせて、お酒の温度を変えるのもポイントです。お刺身など冷たいものを食べる際は冷酒で、鍋や煮込みなど温かい料理を食べる際はお燗で、とすることで、さらに口の中で味わいの調和が生まれます。
千寿に合う料理
合わせる料理を選ばないオールマイティさ、そして料理や素材の美味しさを引き立てるのが、千寿の大きな魅力です。
すっきりとした飲み口の酒とペアリングする際のセオリーであるさっぱりした料理のほか、こってりとした料理などを合わせてもバランス良く味わえます。例えば、こんな料理と相性抜群です。
・日本酒に合う料理の王道「旬の刺身」
・豆の甘みがさらに際立つ「焼き枝豆」
・肉の旨味がたっぷり溶け込んだ「牛すじ煮込み」
・コク深い味わいの「鰻のかば焼き」
千寿と料理の組み合わせの幅広さは無限です。ぜひさまざまな料理と一緒に楽しんでみてください。「KUBOTAYA」では、千寿に合う様々な料理や飲み方を紹介していますので、「久保田千寿レシピ」で検索をしてみてください。
「久保田 千寿」の商品ラインナップ
久保田 千寿
ご紹介した通り、1985年から発売している基本となる千寿です。自宅での晩酌用に、友達との飲み会に、さまざまなシーンにマッチする器用なお酒です。酒販店の他、スーパーマーケットなどでも購入でき、お手頃な価格も大きな魅力です。
希望小売価格
1,800ml 2,430円(税込2,673円)
720ml 1,080円(税込1,188円)
300ml 500円(税込550円)
久保田 千寿 吟醸生原酒(1月限定)
最も酒造りに適している冬に仕込んだ千寿の搾りたての原酒をそのまま味わえる「久保田 千寿 吟醸生原酒」。1月の限定出荷なので、冬だけ楽しめる味わいの一本です。
原酒らしいフレッシュ感と濃厚さがありつつ、千寿の持つすっきりした飲み口やキレも感じられます。キリッと冷やしお酒の輪郭を際立たせて飲むのがおすすめです。また、千寿よりもアルコール度数が19度と高く、濃厚な味わいのため、ロックや炭酸と割ってすっきりと味わうのも良いでしょう。
希望小売価格
1,830ml 3,120円(税込3,432円)
720ml 1,400円(税込1,540円)
久保田 千寿 秋あがり(9月限定)
冬に仕込んだ千寿の原酒を、夏を越え秋までじっくり熟成させたのが、9月限定出荷の「久保田 千寿 秋あがり」です。搾りたての生原酒ならではの濃厚でしっかりとした味わいが、火入れ後の熟成によって、丸みを帯びたよりまろやかな味わいへと変化しています。冷やすと、千寿ならではのキレとやわらかな酸味を、常温でとろっとした口当たりと旨味を楽しめます。
「久保田 千寿 吟醸生原酒」と「久保田 千寿 秋あがり」、どちらも味わっていただくことで、年月による味わいの変化を感じていただくこともできます。
希望小売価格
720ml 1,450円(税込1,595円)
久保田 千寿 純米吟醸
千寿は吟醸ですが、こちらは千寿の純米吟醸版。現代の食と共に寄り添いたい、との想いから生まれた商品です。
千寿より、ほどよい酸味や旨味の余韻が特徴です。口当たりはやわらかいながら、ドライな味やキレの良さがよりはっきりと味わえます。千寿と飲み比べることで、アル添酒と純米の味わいの違いを感じることも。
さっぱりとした料理はもちろん、バターやマヨネーズなどを使ったコクのある料理ともお楽しみいただけます。和食だけではなく、洋食や中華などジャンルに関わらず、幅広い料理と相性のよい純米吟醸酒です。
希望小売価格
1,800ml 2,800円(税込3,080円)
720ml 1,300円(税込1,430円)
300ml 650円(税込715円)
「久保田 千寿」はさまざまな飲み方が楽しめる日本酒
歴史や酒造りのこだわりなど、千寿をもっと深く知ることで、より千寿ならではの個性にふれられるのではないでしょうか。この記事を参考にしながら、ぜひ「久保田 千寿」を美味しく味わってみてください。