日本酒「久保田」は日本酒を飲まない人でも知っているほど、日本酒の中では有名な銘柄です。一度は名前を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。この久保田、実は現在16種類の商品が発売されており、それぞれ味わいが異なります。今回は久保田の中でも特に人気の高い商品である「久保田 萬寿」と「久保田 千寿」について、それぞれの違いをご紹介していきます。
「久保田」とは
「久保田」は、1985年に誕生した日本酒のブランドです。
誕生から36年と、数百年の歴史がある日本酒の中ではまだ若いブランドですが、日本酒を飲まない人にも知られているほどまでに育ちました。
「久保田」は、新潟県長岡市にある酒蔵「朝日酒造」で造られています。
朝日酒造は、1830(天保元)年に「久保田屋」の屋号で創業しました。この屋号を冠したのが「久保田」です。
日本酒は甘口で濃厚な味わいのものが常識とされていた中で、朝日酒造は「これからは飲み飽きない淡麗辛口の日本酒が求められる」と確信し、「久保田」を打ち出しました。
シャープなキレ味と飲み飽きしない味わいは衝撃をもたらし、従来の日本酒のイメージを180度変えました。
「酒の品質は、原料の品質を超えられない」をポリシーに、米や水にも強いこだわりを持っています。淡麗辛口の味わいを生み出すのに最適な酒米「五百万石」は、地域の契約栽培農家によって多くが栽培され、厳格な品質管理のもとに使用。仕込み水には、新潟県内でもとりわけ清らかな軟水が使われていて、「久保田」の味の源となっています。
そして、「人」。朝日酒造のある越路地域は、日本三大杜氏の一つである越後杜氏のなかでも、「越後四大杜氏集団」と言われた「越路杜氏」を輩出した土地。その越路杜氏の智慧と技を受け継ぎ、その志のもと、品質本位の酒造りを追求しています。
「久保田 萬寿」と「久保田 千寿」の違い
名前は知っているという人は多くいるかもしれませんが、どう違うのか?というのは意外と知らない人も多いようです。そこで、ここでは萬寿と千寿、それぞれ何が違うのかを一つ一つ説明していきます。
萬寿と千寿の歴史
1985年5月21日の久保田誕生当時に最初に発売となったのが、「久保田 千寿」と「久保田 百寿」です。
当時、日本酒と言えば甘口でコクの強い味わい、というイメージが一般的に定着していました。しかし、朝日酒造はこの先はキレがありさっぱりした「淡麗辛口」が好まれると予見し、久保田を作りました。淡麗辛口という日本酒の新たな方向性を確立した、久保田の原点となるお酒です。
その翌年の1986年に誕生したのが「久保田 萬寿」です。当時としてはトップの50~40%の精米歩合や、山廃仕込みの採用など、常識にとらわれない挑戦の末に誕生しました。
萬寿と千寿の造りの違い
久保田 萬寿 | 久保田 千寿 | |
---|---|---|
特定名称 | 純米大吟醸 | 吟醸 |
原料米・精米歩合 | 麹米:五百万石 50%
掛米:新潟県産米 33%
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麹米:五百万石 50%
掛米:新潟県産米 55%
|
アルコール度数 | 15度 | 15度 |
日本酒度 | +2.0 | +5.0 |
また、萬寿は麹造りの精度を高めることで味にふくらみ・柔らかさが生まれ、深みのある味わいが印象的に、千寿は醸造アルコールを添加しているため、よりすっきりとした味わいになっています。
萬寿と千寿の味わいの違い
萬寿は、深みのある柔らかな味わいと香りの調和が特徴です。
複雑で深みのある口当たり、ふくらみのある柔らかさ、上品な甘味と優しく存在感のある味わい、そこにフルーティーでありながら重厚な香りが広がります。そして、スーっとキレのある後味は、まさに久保田の真骨頂です。
発売以来、多くのお客様の特別な記念日を彩ってきた一本です。
千寿は、すっきりとした透明感のある味わいが特徴的です。米の旨味がほど良く感じられ、軽やかで上品な風味を楽しめます。口に含んだ際の淡麗な味、そして口の中にゆっくり旨味が広がっていくことによる味わいの変化で、千寿のもつ潔さが感じられます。また、飲み進めるごとに洗練さが際立ち、よりすっきりした味わいを楽しむことができる点も千寿ならではです。
クセのない飲み口で料理の邪魔にならないため、毎日の食卓にもぴったりでしょう。なお、これまであまり日本酒を飲んだことのない方の入門的なお酒としてもおすすめです。
同じ久保田にラインアップする日本酒ではあるものの、まろやかな深みのある萬寿とすっきりとした飲み口の千寿は、それぞれ対極となるような味わいの違いを持っていると言えます。
萬寿と千寿の価格の違い
久保田 萬寿 | 久保田 千寿 | |
---|---|---|
1,800ml | 8,110円(税込8,921円) | 2,430円(税込2,673円) |
720ml | 3,640円(税込4,004円) | 1,080円(税込1,188円) |
300ml | 販売なし | 500円(税込550円) |
そのため、千寿は毎日の食事と一緒に、また居酒屋などで飲まれることが多い一方で、萬寿は誕生日やお正月、記念日など特別な時に飲んでいただいたり、上司や大事な方へのプレゼントに使われることが多いお酒です。
「久保田 萬寿」の商品ラインアップ
萬寿は、現在特別な時を味わうプレミアムラインとして、全部で3商品あります。
「久保田 萬寿 自社酵母仕込」は、酒米、精米方法、自社酵母の3つにこだわり醸した特別な萬寿です。
蔵人も生産に携わった新潟県長岡市越路地域産の酒米「五百万石」を、自社でプログラムした「原形精米」により精米歩合40%まで磨き上げ、長年かけて育種した自社開発の酵母で仕込みました。重層的でエレガントな香りと、深くまろやかな味わいが広がります。
就職や結婚、新築、昇進や還暦のお祝いなど、人生のなかで幾重にも訪れる節目や記念日にふさわしい、朝日酒造の技を集結させた一本です。
「久保田 萬寿 無濾過生原酒」は、寒造りで造られた、冬限定の萬寿です。
もろみを搾った後、一切手を加えない製法ならではの、ほのかな黄金色の見た目と芳醇な香り。濃厚で深い味わいをもちながらも、柔らかくなめらかな口当たりが特長です。素朴で、上質な搾りたての味わいは、寿司、天ぷら、懐石などの和食によく合います。
「久保田 千寿」の商品ラインアップ
千寿は、現在いつもの食事をより特別に美味しく味わうデイリーラインとして、4商品揃えています。
「久保田 千寿 吟醸生原酒」は、寒造りで造られた冬限定の千寿です。
原酒らしいフレッシュ感と濃厚さがありつつ、千寿の持つすっきりした飲み口やキレも感じられます。キリッと冷やしお酒の輪郭を際立たせて飲むのがおすすめです。また、ベーシックな千寿よりもアルコール度数が高く濃厚な味わいのため、ロックや炭酸と割ってすっきりと味わうのも良いでしょう。
「久保田 千寿 秋あがり」は、冬に仕込んだ千寿の原酒を、夏を越え秋までじっくり熟成させたお酒です。
搾りたての生原酒ならではの濃厚でしっかりとした味わいが、火入れ後の熟成によって、丸みを帯びたよりまろやかな味わいへと変化しています。冷やすと、千寿ならではのキレとやわらかな酸味を、常温でとろっとした口当たりと旨味をお楽しみいただけます。
「久保田 千寿 純米吟醸」は、綺麗ですっきりとした千寿らしさはそのままに、ベーシックな千寿よりほどよい酸味や旨味の余韻が特徴の純米吟醸酒です。今の時代の食生活に合わせて誕生したお酒です。
口当たりはやわらかく、ドライな飲み口を楽しめます。冷やすとほどよい酸味とキレを、常温になると酸味がたち、旨味の余韻を感じられます。さっぱりとした料理からコクのある料理まで、幅広くお楽しみいただけます。
萬寿と千寿、それぞれの楽しみ方を
そして、一緒に食べる料理や相手、シーンなどその時々に合わせて、萬寿と千寿、それぞれ合うお酒を選んで楽しんでいただけると、より美味しい時間を過ごしていただけることでしょう。