日本酒は、米・米麹・水を主原料としたお酒です。この日本酒造りに合うように開発されたお米を「酒造好適米」または「酒米」と言います。その酒造好適米の中でも、山田錦に次いで有名なのが「五百万石」。五百万石について、その歴史や特徴、生産地のほか、五百万石を使った有名な日本酒も紹介します。
五百万石とは
日本酒は、米・米麹・水を主原料としたお酒です。この日本酒造りに合うように開発されたお米を「酒造好適米」または「酒米」と言います。
酒造好適米として登録されている品種は、農林水産省の「令和3年産 醸造用玄米の産地品種銘柄一覧」によると224種類もあります。その中でも「山田錦」や「五百万石」、「美山錦」、「雄町」などが有名な酒造好適米です。
ここでは、酒造好適米の中でも生産量2位を誇る、五百万石について解説します。
五百万石の歴史
その後、1956年に初の試験醸造となり、翌年の1957年に、新潟県の米生産量が500万石を突破したことを記念して、「五百万石」と命名されました。命名とともに、新潟県の奨励品種として品種登録されました。
五百万石の特徴
五百万石は、寒冷地の気候風土に合わせて開発された、早く成長する早生(わせ)品種です。
小さめの粒ながら心白が大きく、麹が造りやすいのが特徴です。ただし、心白が大きいため、50%以上の高精白は難しいと言われています。
米を蒸した際に粘らないため、外硬内軟の蒸米に仕上がります。また、やや硬めで溶けにくい米質のため、すっきりとしたキレのある淡麗の酒質になる傾向があります。
新潟の淡麗辛口は、五百万石の開発があったからこそ誕生したとも言われています。
五百万石の生産地と生産量
五百万石の生産地は、新潟県のほか、福井県、富山県、石川県の北陸地方を中心に栽培されています。
農林水産省の「令和2年度 酒造好適米等の需要量調査結果」によると、2021年の五百万石の生産見込み量は11,178トン。そのうち、新潟県の生産量は6,074トンで、五百万石の総生産量の約54%を占めています。
そのほか、福島県や兵庫県、京都府など、南東北から九州北部まで広範囲にわたって栽培されています。
安定した栽培特性や醸造の機械化への適応により、2001年に山田錦に追い越されるまでは、酒造好適米の中では作付け面積1位を誇っていました。今でも、山田錦に次いで生産量は2位で、酒造好適米の二大トップとなっています。
五百万石から生まれた酒米
五百万石を親とする新たな酒造好適米も誕生しています。
1989年に新潟県農事試験場で、「山田錦」を母、「五百万石」を父として交配。その後調査などを継続して、2004年に誕生したのが「越淡麗」です。
五百万石が50%を超える高精白が難しいことから、新潟県内では大吟醸酒造りに他県産の山田錦を使用することが多くありました。新潟県産米で大吟醸酒が醸造できるようにと、新たな酒造好適米の開発が求められ、越淡麗が誕生しました。
大粒でたんぱく質の含有量が少なく、精米歩合50%以下の高精白にも対応できるのが特徴です。
五百万石を使った日本酒
久保田 千寿 純米吟醸
麹米で50%、掛米で55%の精米歩合で磨いた五百万石を使った「久保田 千寿 純米吟醸」。フランス人のための日本酒コンクール「Kura Master 2021」では、米品種 五百万石部門でプラチナ賞も受賞しました。
五百万石由来の綺麗ですっきりとした味わいと、上品で澄んだ香りでバランスのとれた、料理の邪魔をしない純米吟醸酒。口当たりはやわらかく、ドライな飲み口を楽しめます。冷やすとほどよい酸味とキレを、常温になると酸味がたち、旨味の余韻を感じられます。
久保田 萬寿 自社酵母仕込
高精白が難しい五百万石を、精米歩合40%まで磨いて造った「久保田 萬寿 自社酵母仕込」。
この五百万石を極限まで磨くために選んだのは、「原形精米」と呼ばれる方法でした。米の形状を保ちながら精米をすることで、たんぱく質を効率よく低減させることに成功。綺麗ですっきりとした味わいを引き出すために、通常の約2倍の100時間をかけながら、丁寧に磨き上げています。
重層的でエレガントな香りと、深くまろやかな味わいが広がります。口に含めば、存在感のある味わいながら、後味は透き通るようなキレを感じられます。
酒米を知って日本酒を味わう
酒米の特徴を知ることで、日本酒の味わいをより深く感じることもできるはず。
これから日本酒を飲むときは、酒米にも注目して味わってみてください。